管理組合オンライン会議雑感:

  1. これは自問自答の文章:
    管理組合の役員(理事・監事・賛助員)は、最近では、ほぼ毎週のように理事会を開催しています。なるべく会議は、短く簡潔にという申し合わせはいつもしていますが、いろいろなテーマについて議論すると、どうしても議論が発展して長くなる傾向は否めません。(これは、参加者の性別とは全く関係はありません。むしろ今まで気づかなかった多様な意見が、いろいろな角度から提起され、それを相手に理解してもらおうと丁寧に説明しようとするメンバーが多いからだと思います。)

  2. オンライン会議の功罪:
    昨年の総会以降、理事会はオンライン会議となりました。時間をかけて、管理会社の事務所に集合することなく、開始5分前にPCの前に座れば、すぐいつものメンバーと面談できるので効率的です。資料も、画面に拡大して表示・共有でき、文章の編集もその場で確認できるなど、オンライン会議に慣れるに従って、むしろ効率的な会議ができるようになったと思います。しかし、一方でオンライン会議のもどかしさはあります。ネットワーク環境などの理由で、音声が聞きにくくなったり、雑音が入ったりすることもあります。なによりもアイコンタクトというか、説明している内容を、表情などで聞き手の反応を同時に話し手が瞬時に感じ取りにくいという点はあります。人間のコミュニケーションは、長い進化の中で、黒目と白目を区別し、目の動き、顔つき、手などの動作など微秒なボディーランゲージで、双方向通信を効率化させてきたのです。これは今後、高精細の通信技術などである程度補うようになっていくでしょうが、それでも、3Dのリアル空間を共有した面談にはかなわないと思います。

  3. 理事会のテーマは共通テーマ:
    理事会がオンラインになってからPCやネットワーク環境を、新たな整備した役員もいます。オンライン会議は、誰でも使いこなせるように簡単な操作になってきているとはいえ、最初は、該当するソフトウェアをダウンロードしたり、ネットワークのみならず、カメラやマイクの確認をしたりするなど、オンライン通信の環境を整える必要があります。理事会は、管理会社とのセキュリティの関連もあり、Microsoft社のTeamsというソフトを利用していますが、これはZoomよりも多機能で慣れるのに少し時間がかかるような気がします。他にもSkypeなどのように個人間で利用されている方がおられる反面、オンライン会議は、実は、なかなかやる機会がなくて初めてという方も意外とおられます。理事会のメンバーも当初はそうでした。それは技術的なハードルではなく、むしろオンラインならでの心理的な問題ではないかと思います。それは一人で試行しても、いろいろな使い勝手や実感がなかなかわかりくにく、実際に何度も使っていく内に、(あたかも自転車の運転のように)慣れていくものだからです。知識よりも体験が重要なオンライン会議ですが、これには仲間とテーマが要るのです。つまり、オンライン会議をしなければならないような事情(今のコロナ渦の状況)の中で、ある程度のデジタル知識を持ったメンバーがいて相互に教え合い、しかもそのオンライン会議を継続しなければならないようなテーマが存在することが重要な要素なのです。

  4. 若者のSNSとの共通性:
    今の若い世代は、メールよりもむしろラインなどSNSが、必須のコミュニケーションツールになっています。それは若い世代ほど、学校や友達や恋愛など身近な話題で頻繁に意見交換し、自分や相手の状況を確認し合う必要性が高いことが原因ではないかと思います。一方で、年齢が高い人たちのSNS利用度が低いのは、そのデジタル技術の(小さなスマホ画面の操作を含めた)ハードルの高さではなく、SNSで頻繁に情報交換したくなるような相手や機会が少なくなっていることが最大の理由ではないでしょうか。また、メールと異なり、ビジネスの場面のように論理的な文章を推敲して書いたり、その記録を残したりする上で、SNSがあまり適していなかったという事情もあるかと思います。しかし、若者のコミュニケーションの相手も環境も、時間とともに変化していきます。ビジネスの場面ともなれば、相手の意見をきちんと把握し、それに適確な回答をタイムリーに返す。ミーティングの記録は、要領よく早く仕上げて報告する。会話の相手は、かならずしも自分にとって好ましい相手だけではなく、時には、意見が対立したり、論破したり、逆に妥協したり、意見をまとめていくためのさまざまなコミュニケーションが必要になってくる大人世界に、若者も仲間入りしてくるようになるのです。

  5. 理事会メンバーの背景は会社より広い:
    理事会メンバーは、同じ別荘内の道路・水道・インフラなど共通の関心事項を、他の所有者や、管理会社や管理人と連携してどのように効率的に維持管理していくのかに関心をもつボランタリー・ベースで集まった別荘所有者です。その背景も、年齢も、それぞれの経歴も得意分野も、(過去の経歴などで選んだ訳ではないのですが)非常に多様な構成になっています。これは、業種と目的が明確な企業よりも、広いと言えます。しかも、別荘所有者は、自宅が別の場所にあるので、町内会よりも多様性があるとも言えます。別荘の課題は、自然に親しみ別荘ライフを楽しむという共通性はありますが、別荘の共有資産を維持管理する上では、法律的な問題(未払い者にどう対応するか)、環境問題(ゴミ処理や倒木などへの対応)そして何よりも共同で購入している水道水を、漏水を防ぎ、どう管理分配していくのか、経年劣化していく道路・水道設備などインフラをどう維持していくのかなど、快適な別荘を維持するための課題など多岐にわたります。特に、別荘の場合は、マンションと同様に、その所有者が共有している部分(区分所有)をどのように合理的に・持続的に維持していくのかが重要なテーマです。管理組合の法人化もこの意味で、区分所有法の助けを借りながら、共有資産の管理を合理的に行う目的で実施しました。この活動は、社会的にも意味があります。特に、別荘の永続的な維持管理という意味では、若い世代の人にとっては、理事会に参加することで、多様なメンバーと意見交換し、課題を解決するメカニズムを学ぶ良い機会となるかと思います。それは、会社と家庭と趣味の他に、もう一つの関係性を広げる機会ともなり、経験やノウハウ面での相乗効果が生まれます。

  6. デジタル技術はコロナ渦への対抗策:
    現在のコロナ渦で、どうメンタルを維持していくのかは、重要なテーマです。Googleで、「引きこもり」を英語で何と表現するのかを検索したら、その一つに「Stay Home」がありました。私達は、今、社会的な「引きこもり」を迫られているのです。メンタルを維持してこれに対抗するには、デジタル活用が一番です。デジタルの世界には、同じ名前で呼ばれるデジタルな「ウイルス」がいますが、それは人間には感染しないし、病気を発症することもありません。別荘のHPも、必要に応じて、瞬時に情報を伝達することができます。オンライン理事会のみならず、この別荘のHP作成にも、ぜひさまざまな方々に参画していただきたいです。記事や写真を投稿していただくだけでも、別荘のHPの内容は豊かになります。それは、「ひきこもり=Stay Home」を迫られる中で、コロナウイルスに対抗できる人間側の有効な対抗手段なのです。コロナウイルスがどんなに変異しようとも、デジタルの世界に侵入して感染させることができないのです。紙を減らし、ハンコを減らし、デジタル決済するのは、合理化のためというより、コロナウイルスが入ってこれないデジタルの世界を、人間が新たな砦として拡張する対抗策の一貫なのではないかと思っています。

  7. 鳴沢の語源を見つけました。
    Stay Home中に、古語辞典をながめていたら、万葉集の歌の中に「鳴沢」の文字を見つけました。
     さ寝らくは玉の緒ばかり恋ふらくは富士の高嶺の鳴沢のごと
     (共寝することはほんの短い時間だけであり、恋いこがれていることは富士の高嶺の鳴沢のように限りないことだ)

    ❏ 理事長: 小林寛三