9/28の臨時総会で議長席から見えてきたもの

2019/9/28の臨時総会は、大きな分水嶺になりました。

1.2019/9/28土曜日は忘れられない日になりました。まず、ラグビーワールカップで、19-12で奇跡の勝利を挙げました。ラグビーは奇跡が起こりにくいスポーツを言われながら、事前の予想を覆して辛勝したのです。ラグビーには「ノーサイド」という概念が浸透しており、これは試合後は、敵味方の側(side)の区別がなくなるというのが語源らしいです。(英語では、最近はfull timeというがこちらは時間を使い果たしたという疲労感しか感じられませんが)さらにこれを実践した光景が試合後に見られました。試合後は、相手選手の健闘に対して花道を作って拍手で迎えたのです。最初は、日本選手が、次にアイルランド選手がそれぞれの対戦相手から拍手で迎えられたのです。

2.一方、同じ9/28に、臨時総会が14:00から18:00過ぎまで管理会社の三菱地所コミュニティーで行われておりました。管理組合の役員は、この日は朝10:00前からほぼ全員が集合していました。前夜まで電話などで法人化の意義を訴えて支持の拡大を図っていたので、皆疲れ切った様子でした。そして、この総会当日、賛成してくれそうな所有者の中には、急用ができて欠席されそうな方々もでてきたのです。会場に参加して賛成票を投じていただけないとなると、それは棄権となり、「別荘所有者の3/4の多数」を得なければならない法人化にとっては、反対票と同じになってしまいます。

3.コンピュータには「マーフィーの法則」が言われており、実際にそのような体験を感じることがよくあります。この原義は「起こる可能性があるなら、それは実際に起こる (If it can happen, it will happen)」という諺のようなもので、その実際とは、今、この大事なときになぜ...というものです。つまり泣きっ面に蜂ということです。法人化についての説明を、いかにわかりやすくPowerPointにまとめるかに集中すべき時間帯に、PCとプロジェクターがうまくつながらなかったのです。会場にあるDsubケーブルが短かすぎて、うまくPCまで届かないし、接続できない状況だったのです。これでは、うまい「説明」どころか、接続迷走の「接迷」ではないかなどと、つまらない考えが浮上してさらに集中力を落とすこととなっていったのです。また、所有者総数の動向をExcelで整理すると、その行は1000行にも達し、狭いノートPCでは、操作に手間取るし、Excelの動きもいつもより緩慢に感じてしまいました。

4.案の定、予定の時間を15分ほど遅れて、開始し始めましたが、会場からも、法人化に伴う管理規約のどの部分の説明かわかりにくいぞ、声が聞き取りにくいぞなどお叱りの声が飛びました。議長席の方も、水も用意していなかったので、喉が乾き、冷や汗でいつもの調子がでませんでした。冷静沈着にと思っても、うまく進行できるのか不安が募ってきました。(本来は組合員なのに)傍聴者と称するいつもの立て看板製作者も、近くに陣取り、傍若無人の容赦ない批判やヤジも大変なプレッシャーでした。

5.しかし、ありがたかったことには、参加者から、熱心な質問やコメントが次々と発せられ、誰一人席を立とうという方はおられなかったのです。何度かのお手紙とやお電話でお話しただけで、別荘に滞在している間は、おそらくごく近くですれ違っても挨拶もできずに、また同じ場所で時を過ごし、あの富士山麓の爽やかな自然の中で、同じ空気と水を共有していたはずのご近所同士なのに、ほとんどがこの総会でお会いする初対面の方々ばかりでした。でも、こんなに真剣に別荘のことを考えて心配して発言していただけることにとても勇気づけられました。

6.会場からの質問の中には、1) あの立て看板は別荘の価値を毀損している。いつどのように撤去できるのか? 2) 第2議案の管理規約には、管理費の金額が書かれていないが、恣意的な規定がされない保証はあるのか? 3) 議決権者は、家族でもOKという基準は曖昧なのでは? 4) こんなに管理組合が大変なら、誰も理事の成り手がいなくなるのではないか? 5) 不正追求委員会などいろいろ言われいるが、実際はどうなのか?など、さまざまなご心配やご疑念からの質問が多くありました。特に、4)に関する小生のお答えとして、「確かに少子高齢化の中で、所有者としての意見表明や活動ができなくなり、次世代に譲るとしても、うまく継承されるのか心配があります。道路や水道など別荘のインフラもあと10年20年大丈夫かという心配もありますが、反面、現在の所有者の健康状態や意欲自体の減退があり、別荘の荒廃以前に、中長期的な所有者の意志の発現が保てるのかがより心配でもあります。今回、お電話連絡させていただいたご高齢の所有者の方の中には、法人化の趣旨はわかったが、自分は一人暮らしで体調も悪いのでFAX送信すらできない状況だ。」という方もおられました。私は、「丸紅富士桜別荘管理組合」は「丸紅富士桜別荘"介護施設"管理組合」になってもいいのではと思っています。この豊かな自然の中で、相互扶助が行き届くならば、それも別荘の良い将来像の一つではないか、と。お互いに高齢者になっても、健康な高齢者がそうでない高齢者を見守り支援する。そしてその孫達は、そんなおじいちゃん・おばあちゃんの別荘に、夏休みの宿題を持って毎年やってくる。管理事務所のコミュニティーセンターは、夏休みの宿題を一緒に学び教える3世代の家族で溢れる。「管理」組合は、何を管理するのかと問われることがあります。管理するのは道路水道など共通のインフラですというのがその回答ですが、そのインフラを共用するのは所有者住民なのです。そのインフラはおいしい水を届けるだけでなく、その水を愛しむ老若男女こそが大切なのだと思います。私事ですが、この別荘を購入し、こよなく別荘を愛し、最後まで別荘に来るのを楽しみにしていた義母は、昨年101歳で他界しました。初盆も別荘の庭で迎え、河口湖では灯篭流しに参加してきました。

7.9/28の第2議案は、今後、法人化された管理組合の憲法に当たる基本契約です。この変更は、「組合員総数および議決権総数の3/4以上」の多数が必要となります(管理規約第48条3)。今回同様、厳しい条件が、区分所有法によって要件とされています(特別決議)。この内、議決権総数とは、土地の持分割合なので、すぐに計算できますが、問題は、組合員との連絡です。今回も、かなりの人数の組合員が、住所も電話番号も管理会社に届け出ておらず、電話番号も現在使われていないものが相当数ありました。今回、臨時総会に参加された所有者からは全員の賛成票をいただき、結論として、所有者の80%前後ものご賛同を得て議案の可決をすることができました。では残りの20%が反対や棄権者なのではなく、実は、総会議定書も届いていないか、届いていても電話がつながらずお話もできずに、出欠票のご返事をいただけなかった方々がほとんどで、積極的に異論を唱える方々は、ごく少数だったという事実があります。

8.「少子高齢化」の進行とともに、連絡できなくなる、連絡できても行動できなくなるという不安は、今後も続きます。では、今後、予算案など、別荘の維持管理に必要な行動が、総会の一般決議でも、棄権者が増えて、総会そのものが成立しなくなり、予算執行もできず、管理組合は行動不能になるのではないかというご心配がでてきます。予算案や管理費の賦課方法、修繕積立金の取り崩しや役員選任などは、総会議決が必要です。総会の一般決議方法については、第48条1で「議決権総数の過半数の参加と、その出席組合員の過半数」で議決するとあり、また、この「議決権」を行使にするには、組合員の議決行使者を総会開会までに理事長に届け出なければならないと定めています(第47条3および第28条5)。即ち、住所等連絡がつかない所有者は、実質的に議決権を行使することができないという規定になっています。連絡がつく所有者に対しては、総会案内とその議案内容をきちんと伝達して、少なくともその半数の委任状や議決権行使書を得ておけというのが総会の一般決議の規定で、そのための努力は当然必要で妥当な規定であると思います。

9.役員の不正についてのご質問がありましたが、今回の管理規約においても、理事長や理事会の監督責任を明示し (第66条)、総会における監事による会計監査(第42条)や、会計帳簿等の閲覧請求なども規定しています(第64条)。また特別の利害関係を有する場合は当該理事はその議決に加われない(第38-39条)など、理事長自身を含め、相互牽制のガバナンスが機能するように透明な管理組合の運営方法が規定されています。それでもさらに管理組合の透明な運営が行われるためには、その下にある理事会を構成するメンバー(理事や監事)に、次々と新たな所有者の参加することが重要です。理事は、12名以内と定められていますが、現在は8名です。この人数が少ないと、お友達だけの理事会になりかねません。ぜひ定員一杯の理事を選任したいと思っていますし、立候補者がそれ以上となると選挙という場が生まれ、理事会活動も活性化します。理事の他には、理事の権限・義務を有しない非常勤理事という規定があり、理事会のオープンな活動を広げるという意味があります。所有者のご家族で若い方々などで、将来、会社組織などの責任者になる前のトレーニングとして、理事会がどう運営され、異なる意見をどう調整し、どう決議され、どうガバナンスが実行されていくのかを実践する場としても、ぜひ参加を呼びかけたいと思っています。地球温暖化対策で、スウェーデンの16歳の少女グレタ・トゥンベリさんが、次世代にために地球環境を守れと呼びかけて大きな反響を呼んでいることに関連して言えば、富士桜の自然環境や健全な別荘ライフを、次世代のために保全せよいう若い人たちの参加を歓迎したいです。

10. そして、今回9/28の臨時総会では、80%前後の多数のご賛同を得て、即ち、(申請の法的要件である)建物所有者(区分所有法65条により自動加入の正組合員)のみならず、土地のみ所有者 (管理規定により加入する準組合員)を併せた全組合員の人数および所有地面積比率の合計いずれにおいても、高いご支持で法人化を目指す議案が可決されました。この高いご支持は、今後法人化される管理組合が行うさまざまな別荘の維持・管理・改善に対する期待であると同時に、その実施状況を所有者住民の多くの目で監視しているという意志の表われと思います。これからは「ノーサイド」、即ち、意見の違いや思惑の違いのサイドを乗り越えて、最大多数のために何をどう実行していくのかが問われる段階に突入したということになります。

11. 総会議長としては、予定のシナリオにない発言をしてしまいました。「ノーサイド」を認めないごく一部の人達は、別荘の価値を毀損する立て看板を取り下げず、訴訟に訴えてくるかも知れません。丸紅㈱が分譲当時の条件を変え、さらには子会社による別荘管理も放り出してしまったことを昔に戻せという主張や、その間のさまざまな出来事を針小棒大に「不正追求」と称する「過去を追求する姿勢」に対し、我々は、今、できることは何か、将来のためにできることは何かの「未来を追求する姿勢」を掲げ、大勢の所有者住民の大きな声に耳を傾け、丸紅富士桜別荘を次世代に伝えていくことを訴えていきたいと申し上げました。

以上です。(理事長:小林寛三)■