別荘地における「コモンズの悲劇」について

昨年2018/12/15の理事会において神原浩二前理事長の後を受けて、急遽、理事長に就任しました小林寛三 (こばやしかんぞう)と申します。皆様には、2018/12/25の管理組合の法人化に向けてのご連絡の中で、理事長交代の挨拶状を入れさせていただきました。これからも、快適な別荘ライフを維持できるよう努力する所存ですので、宜しくお願い致します。

1.2019/3/31の総会に向けて、掲題の件の関連で申し上げたいことがございます。コモンズの悲劇 (Tragedy of Commons)は、米国の生物学者Garrett Hardinが1968年に提唱したことで、限りある資源の枯渇の危機を端的に表現しています。それはつまり、共有地 (コモンズ)に牛を放牧するとします。共有地であれば、私有地と異なり、自分の牛と他人の牛とによる牧草の取り合いになります。各々の農民が限りなく牛を増やし続けるとすれば、共有地の牧草は食べ尽くされ、共有地は荒廃し、やがて全ての農民が被害を被ることになるという話です。

2. 共有地がオープンであり、その資源が有限で枯渇する恐れがある場合、市場競争 (廉価販売や談合)や共通資源 (水利権や漁業権や大気汚染)などでこのような現象が起こります。行政当局は、このようなことがないように介入して、利用制限を定めたり、また利用を有料にするなどの規制によって資源の枯渇を防ぐようにしています。

3.ところが、合意が前提の国際社会においては、このような規制が有効に働かないことも多いのです。昨今の事例では、地球温暖化の問題があります。特に、影響力のある大きなCO2排出国が、「☓☓ファースト」と言って、自国の都合を優先させるような場合です。地球の温暖化やオゾン層の破壊が、人類を含めた地球上の生命にとって極めて有害であることは、科学者を含め国際的な合意になっているにもかかわらず、地球という最大のコモンズの悲劇のシナリオが予測されているのです。

4.身近な問題である別荘地のコモンズの悲劇について敷衍すると、ゴミ投棄のマナーの問題や水道負担金の問題もこれに該当するのではないでしょうか?ゴミの不当投棄の問題は、今般の管理事務所が中央公園へ移転したことに伴い、早急に、管理事務所の側で管理人の監視が行き届く所に、ゴミ収集場所を設置して、不当投棄をなくそうと考えております。

5.また水道の問題は、現在は、富士観光開発株式会社から有料で購入しておりますが、配管の老朽化等により、漏水による無駄な費用が発生しており、この抑制に尽力しておりますものの、引き続き管理組合の最大の問題の一つになっております。都市部のように、水道局が行政サービスとして使用量に応じて検針と料金徴収を行う場合と比べて、我々の別荘地の場合は、設立以来の経緯もあり、現在は一律の料金負担をお願いしている状況です。配管システムの点検・修繕に加えて、水源の多様化や大量に水道を使う所有者の方々との費用分担のあり方など、これからも費用対効果を考慮して、公平で透明度の高い意思決定をしていくことで、コモンズの悲劇が起きないようにしたいと考えます。

6.我々の組合は、分譲当初の管理会社であった丸紅コミュニティ株式会社からの正当な引継組織と認識しており、水道を含む別荘地の管理全般を、所有者の皆様の管理費負担金という形で徴収させていただき運営してきていると自負しております。しかし、残念ながらごく一部の所有者の中には、組合の正当性を巡って異論があり、実質、水道料金の「不払運動」となっています。今般の、総会での法人化は、この管理組合の正当性を多くの所有者の皆様の意思として、行政当局にも認知してもらい、管理組合を法人組織として再生しようという試みです。つまり、法人化によって共有地の管理人としてより透明度の高い運営を行い、丸紅コミュニティ株式会社を吸収合併した現在の管理会社である三菱地所コミュニティ株式会社と連携して、この別荘地のコモンズの悲劇を引き起こさないことを目的としていきます。また、富士観光開発株式会社 (水源の管理・供給)や鳴沢村等の行政当局とも、法人格をもった組織としてきちんと対応していきたいと考えます。別荘地は、マンション団地と同様に、一定区画内に複数の建物と道路・土地・管理事務所など共有設備を有することで、「建物区分所有等に関する法律」第65条に基づく「団地管理組合法人」として認可してもらうという方針です。

7.このホームページも、世界遺産である富士山の北麓という自然に恵まれた土地での快適で楽しい別荘ライフをテーマにしております。実際には、水道問題のみならず、道路、ゴミ処理、動物の被害、台風等による倒木・災害など問題山積の報告記事が多くなってきているのは事実ですが、それらの対策も当然これからも重視していきますが、本来は、別荘地というコミュニティを如何に安全・安心・快適で、自然を愛でる余裕のある別荘ライフ、即ち、さまざまなイベントやグループ活動、写真展などの老若男女の集う共有地での報告が数多く寄せられるようなホームページでありたいと念願しています。(小林寛三)